ここでは、取引事例比較法について、解説していきます。
ちょっと不動産鑑定評価よりの話になりますので、ご興味ある方は見てくださいね。
取引事例比較法の定義
取引事例比較法は、鑑定評価基準では下記のように定義されています。
取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格(比準価格)を求める手法である。
・・・長くてわけわかりませんね。
要約すると、近くの似た不動産の相場がこれくらいだから、この不動産もこのくらいの価格だよね、という価格の出し方です。
ただし、不動産はこの世に同じものが二つとないので、簡単には比較できません。
そこで、不動産鑑定士の出番になるわけです。
なお、建物は個別性が強いので、土地と建物セットでの比較は非常に難しいことから、取引事例比較法は原則として土地どうしの比較でのみ使えます。
ただし、区分所有建物及びその敷地(分譲マンション)は供給が多く、市場も成熟していて比較しやすいので、適用することができます。
取引事例比較法は、原則として土地どうしの比較か、マンションどうしの比較で使える手法
取引事例比較法の適用
では、手法の適用の流れを簡単に記載します。流れは下記の通りです。
- 事例を集めて選ぶ
- 事情補正
- 時点修正
- 標準化補正
- 地域要因の比較
- 個別的要因の比較
①事例を集めて選ぶ
取引事例比較法はここが命といってもいいです。
変な事例を使ってしまうと、正しい価格は査定できません。
不動産鑑定士は「事例カード」という不動産取引の事例の詳細が記載された資料を見ることができます。これを見るためには、各都道府県の不動産鑑定士協会に所属しなければなりません。
ただ、鑑定士でなくても、ある程度の情報はこちらの「土地情報総合システム」から得ることができます。
http://www.land.mlit.go.jp/webland/
また、土地の価格は地価公示・地価調査との均衡を図る必要があるので、周辺の公示地は必ず確認します。
東京都では、グーグルマップ上で地価公示・地価調査の詳細を確認できます。
http://tokyokante.b8.coreserver.jp/
②事情補正
売り急いでいた事例だったり、家族間の売買などの場合は、相場と大幅に異なる価格の場合があります。
その場合、事情のない通常の価格に補正する必要があります。
ただし、これらの事情の適正な補正率を出すことは難しいため、できる限り特殊な事情がない事例を用いることが必要です。
③時点修正
取引事例が古い場合、その売買があった時から今までの間に、土地価格の相場が上昇・下落している場合があります。
これを修正するのが時点修正です。
地価公示の変化率や、金利の変化などを参考にして修正を行います。
④標準化補正
取引事例の土地が角地だったりすると、地域の相場よりも高く売買されていたりします。
事例の価格を、「その地域の相場」に直すのが標準化補正です。
⑤地域要因の比較
事例のある地域と、対象不動産のある地域では、駅までの距離が違ったり、街並みが違ったりします。
この地域要因の差を修正するのが地域要因の比較です。
⑥個別的要因の比較
最後に、対象不動産のある地域の相場と比べて、対象不動産がどんな特徴があるかを考えます。
例えば少し土地の形が悪く、使いづらいときは、その分マイナスの修正をします。これを個別的要因の比較といいます。
⑦価格(比準価格)の試算
①から⑥までを行なって、ようやく取引事例比較法による価格(比準価格)が試算できます。
取引事例比較法は、更地の価格を出す際に特に重要な手法です。
鑑定士でない方でも、どんな要因で土地の価格が高くなったり低くなったりするかを知っておくと有用だと思います!
ご質問等があれば、お問い合わせフォームかSNSでご連絡ください!
品川 龍仁