ここでは、不動産の鑑定で用いる不動産の分類である「類型(るいけい)」について説明します。
不動産の類型は、有形的利用(見た目)と権利関係の態様(借りる権利などが付着しているかどうか)に応じて区分されます。
類型の一覧
宅地(農地や林地以外の市街地にある土地)の類型は下記です。
- 更地
- 建付地
- 借地権
- 底地
- 区分地上権
また、建物及びその敷地(土地+建物)の類型は下記です。
- 自用の建物及びその敷地
- 貸家及びその敷地
- 借地権付建物
- 区分所有建物及びその敷地
では、それぞれについてみていきましょう。
宅地の類型
まずは宅地の類型です。5種類あります。
①更地(さらち)
更地の定義は下記のとおりです。
更地
建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地
要するに、建物が無くて、所有者(地主)が好きに使える土地のことです。
一般的に更地というと、単に建物がない土地のことを指しますが、
建物が無くても、「借地権」(後述)が付いている土地を買う場合は、それは更地ではなくて「底地」(後述)です。
借地権はまさに「使用収益を制約する権利」だからです。
②建付地(たてつけち)
建付地の定義は下記のとおりです。
建付地
建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地
建物はあるんだけど、土地と建物が両方同じ所有者で、その土地だけを評価してほしいという場合、その土地を「建付地」と呼びます。
なお、建付地上の建物が賃貸アパート等になっていて、誰かに貸されている場合があります。
この場合の建付地を、業界用語で「貸家建付地(かしやたてつけち)」と呼びます。
③借地権(しゃくちけん)
借地権の定義は下記のとおりです。
借地権
借地借家法(廃止前の借地法を含む)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)
あまり説明になっていない定義ですね(笑)
地主さんに「ここに建物を建てたいから、賃料(地代)を払うので土地を貸してほしい」と相談したとします。
地主さんが承諾し、地代を払えば、土地を借りることができます。
ここで、借りた側は「借地権」という「土地を借りる権利」を持つことができます。
借りた側のことを「借地権者」、貸した地主さんのことを「借地権設定者」といいます。
そして、東京などの都会を含め、この「借地権」という権利をお金を出して買う、という売買が成立している地域があります。
詳細はまた別途記載します。
④底地(そこち)
底地の定義は下記のとおりです。
底地
宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権
先ほどの例で、地主さん(借地権設定者)は土地を借地権者に貸しました。
このときから、地主さんが持っているのは「更地」ではなく、「底地」になるわけです。
底地を持っていると借地権者から賃料が入ってきますが、貸してしまっているので
更地のように自分で自由に使うことはできません。
このように、借地権と底地は表裏一体の関係にあります。
⑤区分地上権(くぶんちじょうけん)
区分地上権の定義は下記のとおりです。
区分地上権
工作物を所有するため、地下又は空間に上下の範囲を定めて設定された地上権
なかなかマニアックなので、細かい説明は省きます。
イメージしやすいのは、地下鉄です。
Aさんの持つ土地の下に地下鉄を通したい場合に、地下鉄の運営側とAさんとの間で「区分地上権」を設定します。
地下鉄の運営側はAさんに、この地下を使わせてもらっている代償として賃料を支払います。
建物及びその敷地の類型
次に、建物及びその敷地の類型です。4種類あります。
①自用(じよう)の建物及びその敷地
自用の建物及びその敷地の定義は次の通りです。
自用の建物及びその敷地
建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地
土地もAさんが持っているし、建物もAさんが持っていて、そのAさんが自分で建物を使っている状態です。
1戸建ての住宅、自社ビルなどが該当します。
なお、自用の建物及びその敷地になっている不動産について、土地だけの価格を出す場合には「建付地」の評価になります。
原則、原価法・取引事例比較法・収益還元法の3手法を適用して価格を求めますが、
取引事例比較法は土地建物一体での比較が難しい場合が多いため、2手法での評価になることが多いです。
②貸家(かしや)及びその敷地
貸家及びその敷地の定義は下記の通りです。
貸家及びその敷地
建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地
賃貸アパート、賃貸マンション、オフィスビル、貸倉庫などが該当します。
ある意味一番なじみのある不動産かもしれませんね。
土地と建物はAさんが所有していて、Bさん(複数テナントの場合も)に貸しているという状態です。
Aさんが貸す理由は多くの場合賃料が欲しいからであり、鑑定評価を行う場合もその賃料をベースにした収益還元法を中心に価格を決めます。
③借地権付建物(しゃくちけんつきたてもの)
借地権付建物の定義は、以下の通りです。
借地権付建物
借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物及び借地権
Aさんが持っている土地をBさんに貸していて、その土地の上にBさん所有の建物がある場合です。
借地権単独での取引というのは少なく、Bさんが建物と一緒に土地を借りる権利である借地権を売りたい、というケースが多いです。
この場合、Bさんが建物を自分で使っている場合(自用)か、誰かに貸している場合(貸家)でさらに細分化できます。
④区分所有(くぶんしょゆう)建物及びその敷地
区分所有建物及びその敷地の定義は以下の通りです。
区分所有建物及びその敷地
・建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する 専有部分
・当該専有部分に係る同条第4項に規定する 共用部分の共有持分
・同条第6項に規定する 敷地利用権
一番分かりやすく有名な例が、分譲マンションです。
分譲マンションを買うときは、〇〇マンションの〇〇号室を買う、という形になるわけです。
このとき、部屋の中(=専有部分)を買う、というイメージが強いと思いますが、
実際のマンションの価値は、エレベーターや通路など(=共用部分)を使う権利や、
マンションの敷地を使う権利(=敷地利用権)も含めて構成されているというわけです。
今回はここまでにします!
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品川